こんな寒い日にゃあ出汁の染みた大根がいちばんうめぇ
Henry アドベントカレンダー 11日目 料理長のgiiitaです。
去年のエントリ giiita22.hatenablog.com
昨今30も半ばに差し掛かり、成長する子供とは裏腹に、年々体力も落ち脆弱な体になってきました。 まだ子供も一人では出歩けないので、習い事やら学校の送迎やらで、冬になると朝夕体を冷やすことを強要されています。 暖を取ろうと脂肪の摂取に日々勤しむわけですが、若くないので色々過剰摂取はできません。
なお、私の本年の尿酸値は7.9となりました。予備軍です。対戦よろしくお願いします。
というわけで、今年は割烹仕込みの胃に優しい黄金のだいこんを仕込みます。
個人的にコンビニおでんはセブンイレブンが好きで、手軽なので今でもたまに買いますが 最近は物価高もあり、一食とするにはちと高すぎたり、あんまり汁物大量に買って帰るのも難易度高く、寒い中急いで持って帰っても食べる頃にはぬるくなってたりと、 なかなかコンディションの維持が難しいのが難点。自分で作りましょう。

概要
- 所要時間: 半日〜
材料:
- 鰹節 40g, 5g
- 昆布 10g
- だいこん 1本
- その他おでん具
調味
- 塩
- みりん 50g
- 薄口醤油 15g
手順1-1. 出汁
かつお昆布の出汁を引くのにちょっと時間がかかるので、事前に準備をします。 水1Lに、昆布 (今回は利尻昆布10g) を浸水し、ふやけたら弱火で30分くらい加熱します。
下記「下ごしらえ」にて、大根を下茹でしている間に出汁を引きます。 昆布は高温にすると臭みぬめりが出てしまうので、以下の通り、鍋肌に気泡が付くくらいの温度まで加熱したら昆布を引き揚げます。

その後沸騰させてアクを取り除きます。

鍋が黒いのでなんだかよくわからないけど
アクを取ったら、差し水 (200ccくらい?) して、70-80℃くらいまで温度を下げ、鰹節を投下します。

今回一番出汁には本枯れ節40gほどを使用します。 かつおを投下後、2分ほど *2 で濾します。出汁ガラは2番出汁として使うので、捨てません。

はい、これで一番出汁の完成です。 これは香りが飛びやすく、仕上げとして使うので一旦冷蔵庫に置いておきます。
手順1-2. 下ごしらえ
さぁ続いて本命の大根です。
煮崩れとか自分で食べる分には関係ないので頑張って面取りとか必要ありません。 まずは良さげな大根をたんまり買ってきて、自身のお好みの厚さにぶった斬ります。 皮剥きは厚めに。断面に繊維の輪郭があるのでそこまで剥きます。

手順2. 下茹で
大根はまず2%塩水 (水1L/塩20g) で水から30分煮ます。 浸透圧で大根の青臭さを抜いたり、細胞壁を破壊する効果があります。 30分下茹でを済ませた大根がこんな感じ。 *3 いい感じに透き通っています。

手順3. 本茹で?
塩水で下茹でした後は、二番出汁で煮ます。 水を切った大根を水1Lに浸し、
- 塩ひとつまみ
- 出汁ガラ
でひと煮立ちさせ、追い鰹5gを投入し、ぽこぽこ30分煮ます。

二番出汁とか言ってますが、出汁ガラで煮ているだけです。 二番出汁には香りは強くなく、旨味が出るだけなので、しっかり火を入れられるという特徴があります。
あとは呼び塩と言って、塩水が浸透した大根から塩気を早く抜くためにひとつまみの塩を入れています。
茹で上がったら、出し殻を濾します。

手順4. 味付け
さて、ここまできたら、「出汁」で取った一番出汁を合流します。 一番出汁は香りが強いので、この先は過加熱厳禁です。

一番出汁が合流したら、
- 調味料 (みりん、塩、薄口しょうゆ)
- その他具材
を投入し、1時間ほど極弱火で加熱します。保温くらいの気持ちです。 完全に蓋をするとかなりの弱火でも温度が上がりすぎてしまうので、蓋はずらしておきます。
練り物系は油抜きするなり、牛すじは別途処理するなりよしなに。ここでは割愛します。

練り物ばっかだしこんにゃくと牛すじ忘れちゃったよ
手順5. 仕上げ
おでんで一番重要なのはこの工程です。 鍋が大きいとなかなか大変だったりしますが、10分ほど急冷 *4 ののち、夕方まで冷蔵庫へ投入します。
煮物が最も出汁を吸収するのが、4~50℃という話もあって、おでんも感覚的には冷めていくor冷めていった後でだいぶ仕上がりに差があるように思います。 二日目のカレーがうまい理論でしょうか 浸透圧は温度が高い方が圧が強くなるはずなので原理はちっともわかりませんが、煮物全般当てはまる不思議な現象です。
夕方には結構冷えていると思うので、食前1~2時間かけてゆっくり温めます。 火力は時間に合わせてお好みで、と言いたいところですが、万が一沸騰させようもんなら一気に香りが飛んでしまうので最後まで気を抜かずに。 ここで温度を上げすぎてしまうと、うまいんだけどどことなく香りのボヤけたおでんになってしまいます。
実食
さて、半日かけて仕込んだおでんが待ち遠しい予定だったんですが、 なんとここにきて日中気温19℃、夜になっても15℃... あれ?やっぱ明日にします?

利尻昆布使ったのでぬめりが強くて結んでも解けちゃいます。 佐川さんのおでんを再現するには日高昆布が良さそうです。
大根はもう芯までクタクタです。 出汁爆弾です。大根を形成する水分が全て出汁に置換されています。 ここまで液体だと大腸カメラ前日にも食べられそう
我が家ではカセットコンロで鍋ごと出して具材を1つづつ極熱のままチマチマ食べるのが定番なんですが、 今度はぜひ、芯まで冷えてからやりたいところです。
???「これが家で食えたなら...食えます。」
補足
以下の通り、出汁の取得と大根の事前処理は並列化が可能です。

まとめ
今年のテーマは黄金の大根でした。 煮物系は時間はかかるだけで、他料理と比べて労力は少ないので挑戦しやすいかと思います。
こういう小技はなかなか出所が不明瞭かつ、無根拠だったりするので、AIから聞き出すのも難しかったりするんですよね。 この記事もどこまで科学的に根拠のあることなのかはつゆ知らず...
日本酒のアテにしてもよし、酒焼けした胃袋を休めてもよし 10万するフグの懐石だの、100g1万の松阪牛だの、自家製おでんだので今年も一年を締めくくりましょう。
からすみエンジニアリング
今年もHenry AdventCalendarの季節がやってきました。 20日目、魚の大罪司教 giiita です。
去年のAdventCalendarでは 全ての台所へ贈る浸透圧 をお贈りしました。 さて、今年も浸透圧に関連したお話を。
冬といったら何を思い浮かべますか? そう、ボラ子ですね。これを食べないことには冬は越せません。 カニ、フグ、アンコウ、寒ヒラメ、寒ぶり、車海老、アオリイカ、etc... 食べなきゃいけないものが多すぎて本当に毎年忙しい...まるでこの一年を海が労ってくれているかのようなラインナップで、痛風の歯止めが効きません。 そんな中、片手間でできるカラスミを作らない手はありません。 安くなってくると都内スーパーなどでは小売されるそうです。(みたことないぞ) 今回はhenryの勇敢な仲間たちと割り勘でボラ子を入手しました。これで年末年始に向けてカラスミを作っていきます。
血抜き
ボラ子はすじこのように薄い幕で覆われており、そこには血管がそりゃもう細かく走っており、こいつを綺麗にしてやります。

どこまでやるか決まっているわけではないので別にやらなくても大丈夫。でもせっかくなら極上のカラスミを作りたい!という人は全部取ってやりましょう。 まち針などでプツッと血管に注射を打つイメージでうっすら刺し、硬貨などで穴を開けた方向になぞると、血液が固まっていなければ面白いように血が抜けます。絶対に膜を破ってはいけません!
コツ
- 必ず氷水に漬けながら
- 血抜きに使う道具は殺菌しよう
- 細い針なら膜を完全に突き破っても大丈夫。重要なのは、刺してから押し広げない事。刺したら同じ角度でひき抜く。1突き程度では流出しない
- 注射のように、血管の流れる方向にならうように針を刺す。極細の毛細血管は、横・真上からの差し込みではなかなか捉えられないかも。
- 血が固まっている場合はしばらく氷水につけておく
これを好きなだけ繰り返します。そりゃもう大変です。カラスミ作りで一番大変な作業です。

ここまでやれば完璧です。血液凝固が進んでいる場合、血を溶け出させるために氷水に漬け置いたりしますが、今回は状態が良さそうだったのでスキップしました。
塩漬け
好きなだけ血を抜いたら次は塩蔵です。これによって腐敗の元となる水分を抜き、殺菌します。 そう、浸透圧で殴り倒すのです。基本的にはカッチカチになるまで抜きます。 塩蔵はものすごい殺菌作用があり、フグ毒ですらも無毒化できます。そのためこの工程で漬け込みが甘いとその後の状態管理が難しくなるので塩はケチらずしっかり漬けましょう。

コツ
- 序盤は大量の水分が出るので、ざっくりで。ある程度水が出たら塩に埋める
- へそ(ボラの身の部分)やボラ子の股の部分までしっかり塩を当てる
- 前述の通り、塩は生臭くなりますが、塩の中は殺菌作用があるので、ちゃんと使いまわせる。その後の浸透圧のお供に
- ちなみに、にがりの多い塩でつけるとphの関係で仕上がりが黒くなりやすいとかなんとか...?という説もある。別に売るわけじゃないから気にしないけどね
※今回は時間もないので長期保存しないであろう分は塩蔵一日で切り上げました。年末に間に合わせたいというのが半分
塩抜き
さて、一日の塩蔵でもしっかり水分が抜け、ぶよぶよだったボラ子は餅くらいの弾力になりました。 今度は塩気を抜きつつ酒で戻していきます。

コツ
- 酒はなんでもいい。人によって全然違う酒で戻すので正解はない。安いボトル焼酎からめちゃめちゃ高い日本酒で戻す人まで千差万別。ただし甘口の日本酒は塩気が抜けるのに時間がかかるようなので注意
- カッチカチに塩漬けした個体は、呼び塩(弱塩水)で一日前後塩抜き後、コリがなくなるくらいまで酒につける
干し
さて、あれから3日ほど経ちました。長期保存用はまだ塩の中で眠ってますが、年末用の酒戻しの進捗を確認します。

ホルマリン感ありますね。残念ながら上の方は狭そうだったからか、まだ凝ってたので追い戻しします。 酒塩がキツいようなら酒も入れ変えようかと思ったものの、後続とのタイミングの兼ね合いもあり、舐めてみてもそこまで塩気強い感じでもなかったのでそのままにしました。
下の方はぶよんぶよんでいい感じに塩が抜けたようです。
今日は雲が多かったので、外干しするにはちょっと微妙な天気だったものの、さすがは冬。湿度が低くてあっという間に乾きます。
前回イサキの子でカラスミを作った時は夏の終わりだったので、塩&酒に漬けたとは言え爆速で腐りそうだったこともあり、冷蔵庫で乾燥しましたが、それよりもだいぶ早く乾きますね。 ここからは毎日出し入れするので、日々様子を見ていきます。
コツ
- 股をしっかり開いて干す
- 皮がパリパリに干からびてしまうので、一日1~2回は酒を霧吹きで吹く
- あまり急速に乾くようならオリーブオイルとか、できれば酸化に強い椿油とかを薄く塗る
- 夜間は結露しないよう涼しい室内か冷蔵庫へ
- 室内保管の時は軽い重石を乗せて整形する
1日目
まだ表面はもっちり感があり、重石がぺたっとくっつく感じです。

2日目
表面は乾燥して脂が滲んできました。
ボラ身のハムもうまそうになってきた
ちょっと皺がよってますが、これは重石で張るようにすれば多少治ります。
こればかりは個体差なのである程度はばらつきます。

3日目
今日から2本目も追加で干しに入りました。
そして悲しいことに吊り場所を変えようとした際干し網を落としてしまい、皮が両方裂けてしまった...
中は両方まだ柔らかいのでこれ以上重石は使えなくなりました...とほほ
こう見ると2日の差で追分メイラード化しましたね。2週間も干した頃には真っ黒になるかも
左はずいぶん型の悪い子だ...

4日目
なんとか破れたところが乾いてきた...
もう酒気もだいぶ飛んでカラスミらしい香りがするようになってきました。
ソフトカラスミとしてはもう食べれますね

さて、保存用も1週間たってパッキパキになったので塩抜きに移行します。

5日目
うまそうすぎてここから先は自分との戦い

6日目
メイラード反応も大体落ち着きました。 あとは硬さの問題のみ

7日目
だいぶ固くなってきましたが芯はまだちょっと柔らかい
ここまで来るとなかなか毎日変わり映えがなく、もう食ってもいいだろ感でてきます。

8日目
序盤に落っことして避けてしまった部分が乾燥してヒビ割れてきました。
これは致し方ない...避けた部分を切除する手術を行います。メス...

まだ若干若い感じですが、尿酸値が上がってゆくのを感じる...

まとめ
さて、これでみんな来年から血眼でボラ子を探すことになるのではないかと思いますが、値段を見てびっくり諦めないでください。状態にもよりますが1kg10,000円ならかなり安いと覚えておいておくといいかと思います。 1kg=4腹と仮定して、1腹2,500円ですが、売りに出したらまともなカラスミなら1腹5,000円じゃ買えません。 時間はかかりますが、買うくらいなら作り置きした方が遥かに安く仕上がります。ダース買いでもいいレベル!
え?全然仕事と関係のない話じゃないかって? こうして自身の尿酸値を上げ、病院の稼働率に貢献してゆくのです。 食べ過ぎにはご注意を...